ピペット土方(奴隷)にならないようにするための具体的な戦略

理系キャリアとラボ生活

バイオ系の博士に行こうか迷っている、あるいは現在ポスドクだけど研究業績をあげる以外に自分の市場価値をあげるためにどうすれば良いのだろうか。


このように悩まれている方に向けてこの記事を作成しています。


こんにちは。tomoです。


アカデミアって楽しいけど、キャリアが先行き不透明で常に不安がつきまとっていますよね。


またバイオ系のポスドクや博士課程の学生はピペド(ピペット土方(奴隷))と揶揄され、既製品のキットを「ねるねるねるね」の如く混ぜるだけのクリエイティブのかけらもない人材とされて、民間への就職活動では苦戦を強いられます。


理想的にはウェットの実験技術だけで研究テーマの立案から実行、論文作成、有名雑誌への投稿し、30台前半でテニュアのポジションを取れちゃったりなんかすれば良いのですが、現実はそんなに甘くありません。


40代になってもポスドクや任期付きの助教を続けて、低い賃金でPIにこき使われ続ける人が大勢います。


それがわかっていて果敢に挑戦するのは素晴らしいことですが、民間に就職することに対する抵抗感をもち、だらだらとポスドク生活を続けてしまうのは自身の市場価値を低下させてしまうので非常に危険です。


そこで今回は博士課程やポスドクの道に進んでも人材としての市場価値を上昇させることのできる具体的な戦略について取り上げていきたいと思います。


博士課程に進もうか迷っている学生の方々や現在博士課程に在籍している方々も学生時代からこれらのことを意識して研究活動を行っていけば、ピペド状態に陥る可能性を低減することができると思います。

研究者としての市場価値を高めながらピペドを脱出する戦略

まずは、研究者としての市場価値を高めながら脱ピペドを目指す戦略です。以下二つの能力は民間に転職することになっても強力な武器になりますが、バイオ系研究者として生き残っていくためにも今後は必要不可欠な力になるでしょう。

英語

外資系企業などにいつでも転職できるように英語を学習しましょう。博士課程やポスドクは民間での就業経験がないまま、年齢を重ねてしまうことになります。

よくご存知かと思いますが、日系の企業は終身雇用、新卒一括採用、年功序列の三種の神器を重用しているため、博士課程・ポスドクは非常に不利です。

もちろん、研究の専門性などを活かせば日系企業に就職することも可能ですが、選択肢が非常に狭まります。そこで博士課程・ポスドクの方は外資系企業に注目しましょう。

これらの企業であればジョブ型の雇用を行っていることが多いため、年齢を重ねてしまった博士課程・ポスドクにも勝機があります。

TOEICなどの英語力を証明できる資格を取得しておくと良いと思います。TOEICのスコアですと最低でも730点くらいあると大丈夫かと思います。

理系の論文をたくさん読んだり国際学会に参加してきた博士課程・ポスドクの方ならそれほど難しいスコアではないと思います。

また、近年の日本のアカデミアの状況を鑑みますと、海外学振に応募して海外で研究経験を積むのも一つの手であると思います。

この場合にもTOEICのスコアが730点以上であることが望ましいとされていますので、いずれにせよ英語の学習を行い、TOEICを受験することは有益であるといえます。

さらに日本のアカデミアではポストが非常に限られているので、海外に目を向けるためにも英語は重要なスキルと言えます。

僕が博士課程の頃に行っていた具体的なTOEICの学習方法については本ブログで紹介していますので是非チェックしてみてください。

プログラミング(Python、Rを使った統計学、機械学習)

もちろん、これらのスキルはあなたの研究者としての価値を高めてくれますが、製薬会社やIT/Web業界でも需要があります。

特に2021年現在の大手製薬会社の求人案件を見るとデータサイエンティストとしての業務が多くあるのがわかります。

求められる能力としてはPython・Rを用いたプログラミングスキル、統計学の知識(統計検定2級程度)、機械学習の知識などです。

また次世代シーケンサーの解析や画像解析のスキル、その他ビッグデータのデータベース構築のスキルなどが求められているようです。

一方でIT/Web業界ですと、データアナリストやデータサイエンティストとしての募集にエントリーすることができるかもしれません。

しかし、これらの業界にいきたい場合、少し小さめのベンチャー企業にいくことを想定しておいた方が良いかもしれません。

メガベンチャーとかですと、競合の候補者の方が実務経験あったりすると、採用に至らない可能性が高いです。

正直これらのスキルを普通の分子生物学系の研究室で手に入れるのは厳しいです。

次世代シーケンサーを用いたバイオインフォ系に特化した研究室や情報学科の中の生物学をやっているようなラボで実践経験を積むことが必要になってくるかと思います。

実際、僕も修士課程の頃から次世代シーケンサーを用いた解析や統計学についての経験ができる研究室に所属していました。おかげで、上記の職種で選考に進むことができました。

博士課程やポスドクの方でラボ選びに困っているのでしたら、これらのスキルが学べるような研究室を目指してみるのも手かと思います。

研究者以外の市場価値を高めながらピペドを脱出する戦略

一方でこちらは研究者として独立することを諦めた人向けです。

定年までのポストではあるけれど、教授などにはなれそうにない、あるいは一生ポスドクでだらだら研究だけしたいけど、別の収入源も確保したい、あるいは研究の世界からは完全に足を洗いたい人向けです。

よってこれらのスキルは研究に直接的に役立つことはありません。

プログラミング(Web系エンジニアを目指す)

HTMLやCSS、Javaなどのプログラミング言語を学んで企業に就職するかフリーランスとして独立しましょう。

これらのプログラミングスキルはバイオ系の研究に直接的に役立つわけではありません。完全にwebエンジニアになることを想定しています。

ポスドクのまま40歳を過ぎてしまった人や一生ポスドクとしてぬくぬくやっていく気だが、もう少しお金が欲しい人、あるいは年齢はまだ若いけれども人間関係の煩わしさから会社に所属することに抵抗がある人にもおすすめです

web業界でしたら完全リモートで働くこともできますし、ポスドクをしながらでもクラウドソーシングなどで案件を受注すれば、休日に業務を行うことが可能です。

そして転職が当たり前の業界ですのでポスドク経験が長い人への親和性もあります。

1から勉強する覚悟があるかたでしたらwebエンジニアを目指してみてはいかがでしょうか。

Webマーケターやインフルエンサーになる

最後はwebマーケターとインフルエンサーです。

webマーケターとはインターネット上でマーケティング活動を行う職種でバナー広告やリスティング広告などの広告を使ってユーザーを商品のページに誘導したり、商品についてのホームページをデザインしてユーザーに購入を促す仕組みを作ったりします。

インターネット上で商品の売り買いを行うことが当たり前になってきた世の中で急速に需要が高まっている職業です。

未経験転職も可能(できれば30台前半くらいまで)で採用してくれる企業があります。

雇ってくれる企業にはインターネット広告代理店と事業会社のマーケティング部門の2パターンがあってインターネット広告代理店の方が比較的簡単に採用される傾向にあるようです。

一方で事業会社は経験者を求められることが多いようです。

このインターネット広告代理店で有名なのはサイバーエージェントですが、それ以外にも数人から数百人まで様々な規模のwebマーケティング会社が存在します

これらの会社に共通するのは自由な社風ということです。在宅勤務やオンライン会議は当然のこと私服でも良いですし、上司との関係も古き良き大企業と比べて明らかにフラットです。

このような職場はアカデミアの研究職だった人にとっては親和性が高いのではないのでしょうか。

まとめ


いずれにせよ30前半くらいが一つのリミット。

ポスドクを3年くらいやってみてダメそうだったら早めにキャリアプランを再考するのもありです。

アカデミアの世界にいると独立研究者として研究室を主宰することが唯一のゴールだという先入観を埋め込まれてしまいます。

頭ではそんなことはないとわかっていても、心が納得してくれないなんてことがあるのではないでしょうか。

ただ、研究の世界から離れてみると、視野の狭さに気づかされます。

中学生がクラスで虐められて自殺しちゃうのは、中学生にとってそのクラスが世界の全てだと思い込んでしまう状態に似ています。

研究者からビジネスの世界にジョブチェンジすることを後ろ指さす研究者や裏切り者扱いする研究者などがいますが、彼らはアカデミアの世界が全てであると勘違いしています。

そういう研究者は資本主義社会の中では完全に小山の大将です。

もしあなたがビジネスの世界に興味があるのなら、そんな奴らのことは無視してさっさと次のステップにいきましょう。

一方で私/俺は研究者として絶対にやっていくんだ、プライベートなことなど完全に二の次だという人もいると思います。

素晴らしい志だと思います。本当に心から尊敬します。僕自身は研究者としての道からは離れることになりそうですが、研究者として高い志を持った人たちを全力で応援しています。

また、私自身は英語の力やこれまで培ってきた研究スキルを組み合わせて、外資系実験機器メーカーから複数の内定を獲得することができました。

私が当時実践した具体的な転職方法については以下の記事にまとめてあるので気になる方は是非チェックしてみてください。

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